インクファクトリー

国立国際美術館 〜新国誠一の「具体詩」詩と美術のあいだに〜展

新国誠一

『作者の思いをどこまで再現できるか?』

このレポートも二回目となる訳だが、今回の仕事はいつもとは少し違う。
なんせ美術館に飾られることになる作品(詩)を扱う事となったのだから・・・。

12月の第一土曜日、大阪中之島にある国立国際美術館に行ってきた。
新国誠一の展覧会「新国誠一の「具体詩」詩と美術のあいだに」の
オープニングセレモニーに参加する為である。

時間は少し遡って・・・

今年の7月、初めて、新国誠一の「詩」と出会った。
新国誠一は詩人である。
でも、これまで自分が目にしてきた「詩」とはかけ離れた「詩」であった。

「コンクリート・ポエトリー」・・・

新国誠一の「詩」はこう形容される。 聞き慣れない言葉である。

ここで少し、この聞き慣れない言葉について簡単に説明しておきたい。

コンクリート・ポエトリーとは、「視覚詩」とも呼ばれ、文字や色面で表現される詩のことである。「視覚詩」とは文字通り視覚性をその積極的な要素とする詩である。一般的には国際的な運動であったコンクリート・ポエトリーの名称で語られる事が多い。新国誠一はこのコンクリート・ポエトリーの日本における第一人者として位置づけされる。
コンクリート・ポエトリーが国際運動として発足したのは1956年、この年に、ヨーロッパのコンクリート・ポエトリーの父と言われるスイスのオイゲン・ゴムリンガーと、ブラジルのノイガンドレス派の詩人たちが、新しい詩を《コンクリート》と呼ぶことに同意したのが始まりとされている。

あまり細かに説明をしていくと内容が煩雑になるのでこの程度でとどめておく。

新国誠一についても簡単に略歴を紹介する。

新国誠一(にいくに せいいち)
1925年12月7日 宮城県仙台市に生まれる。
父・新国誠、母・なお。父は教育者。姉弟あり。
1938年 13歳  仙台工業学校(現・仙台工業高等学校)で建築を学ぶ
1945年 20歳  この頃より抒情詩を書く
1948年 23歳  東北学院大学文経学部英文科入学 1951年同学部卒業
1952年 27歳  この頃より詩が雑誌に掲載され始める
1963年 38歳  詩集「0音」刊行
1966年 41歳  ガルニエとの共作「日仏詩集」発行
1969年 44歳  第一回ドイツ・ヴィジュアル・ポエジィ展に招待出品
1977年8月23日 東京都大田区雪谷の自宅で急死 享年52歳。
墓所は仙台市内の無量山超光寺
新国誠一
新国誠一
新国誠一
新国誠一

この新国誠一の作品を見ていると、ダダイズムやネオダダに大きく影響を受けていると思われる。彼の詩の中にも虚無感や既成秩序に対する否定、攻撃、破壊といった思想も感じ取れる。詩の世界はあまりよく知らないが、芸術的観点から見れば、非常に面白く興味深い。なかなか言葉では説明しにくいのだが、そこは是非とも会場に足を運んで、自分の目で確かめていただきたい。新国誠一の生きた時代が良くわかって頂けると思う。

今回はこの作品(詩)のスキャニングから補正、出力までを弊社で請け負う事となった。これが冒頭に掲げた『作者の思いをどこまで再現できるか?』という非常に判断が難しいテーマである。
略歴にもあるように、作者は既に亡き人である。
頼りは残された詩集と原稿のみ。この詩集にしても原稿にしても時代が時代なだけに、保存状態も良いとは言えない。加えてこの時代の出版物である。印刷のクオリティも紙質も現代とは比較にならない程お粗末なわけである。
これを2400dpiという高解像度でスキャニングするのだから、善くも悪くも高解像度である。現代の機器を通して入力されるそれは、その時代のクオリティである。しかしこの入力したデータをそのまま出力するわけにはいかない。冒頭でも述べたが、美術館に展示されるのである、数多の人の目にさらされるのである。
作者の生きた時代性や、作品性を考えると、過度の補正作業は矛盾することになる。こんな時、作者本人に聞く事が出来れば・・・何度思ったことか・・・。
しかし、そんな事を言っても何も解決はしない。
作者の立場になって、気持ちを考えて・・・
新国誠一の世界に入り込む。自分が作者ならどうするか?
どうして欲しいか?亡き人の思いを伝えなければいけないのである。
一言で言ってしまえばデジタル化をするわけだが、そこが難しい。近視眼的に見すぎてもいけないし、会場の構成、作品のサイズ、空間を意識しなければならない。
「良く見せる」ということと、「ありのままを伝える」という二極をまとめなければいけないという作業。センスと感性が問われるわけである。
出力が終わり、会場に並ぶまで安心できなかった。けれどオープニングセレモニーの席で学芸員の方から頂いた言葉で全ては報われた気がした。一つの仕事がここに完結したのである。

新国誠一が生きた時代を僕は知らない。彼が亡くなった年に僕はこの世に生を受けている。この仕事を終えた今、学生時代に好きだった作家の本を読み返している自分がいる。奇しくも新国誠一とほぼ同時代を生きた作家である。自身もネオダダの思想に影響を受け作品を作った学生時代もあった。でも僕はこの時代を知らない。知らないが故に、新国誠一の詩は僕の目に新鮮に映った。仕事を通してではあるが、新国誠一の詩に出会えた事をうれしく思う。

先にも述べたが、是非とも会場へ足を運んでいただきたい。
自らの目で、新国誠一の詩の世界を感じて欲しいと思う。
会期は2009年3月22日までやっております。

国立国際美術館 URL : http://www.nmao.go.jp/

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